平成31年3月21日。平成の時代をトップスピードで奔り続けたスーパースターは、その時代が終わるのとまるで歩調を合わせたかのように、輝ける28年間の選手生活に終止符を打ちました。
全盛時には三振なんてほとんどあり得なかった天才イチローがテレビの目の前で凡退を繰り返す様は、かえって郷愁を誘い、フィナーレに向けての感動の涙へと私をいざないました。
日本でのMLB開幕2連戦を特別なリスペクトを込めて引退の花道としたシアトル・マリナーズの粋なはからいに感謝です。
魂を揺さぶるような名言が山ほどの試合後の85分間に渡る引退会見の中で、とっても気になる話がひとつ。
「2001年にアメリカに来た時と比べて野球は変わった。 頭を使わなくてもできる野球になりつつあると思う。」とイチローはベースボールの未来への危機感を訴えていました。
『セイバーメトリクス』のことだなぁとピンと来ました。
『セイバーメトリクス』とは、野球においてデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法。
20年ほど前に当時常識破りと言われたこの手法を用いて経営危機に瀕した貧乏球団を常勝軍団に変えた実在の人物、米大リーグのオークランド・アスレチックスのビリー・ビーン・ゼネラルマネジャーをブラッド・ピットが演じた映画『マネーボール』(2011年公開、アカデミー賞6部門ノミネート作品)でその存在を知りました。
映画『マネーボール』の中で、当時貧乏球団ではとても獲得できないスター選手の代表として全盛時のイチローの映像が象徴的に使われていたこと、そして引退試合の相手チームがなんと『セイバーメトリクス』を最初に導入したチーム(20年後のアスレチックス)だったことは、何かの偶然でしょうか。いや天才イチローが導いた必然かもしれません…。
20年前は常識破りで画期的だった『セイバーメトリクス』。
試合に『勝つ』ために導入した統計学や確率論やAIの活用がいまやメジャーリーグの本流となっており、その結果として野球本来のダイナミズムを失わせていることが、野球を心から愛するイチローにとってたまらなかったんでしょうね。
過去に何度か小欄で触れていますが、≪テクノロジーの発展は、本来人々の幸せに貢献するもの≫でなければなりません。イチロー選手の問題提議に大いに賛同します!
引退試合で気付いたことがもうひとつ。東京ドーム・バックネット下にデカデカと『MGMリゾーツJAPAN』の広告看板を発見しました。
MGMといえばラスベガスに代表されるカジノやホテル運営の超大手です。統合型リゾート(IR)構想の名の下にあっという間に国会で可決された『カジノ』の日本導入。
そして申し合わせたように黒船(MGM)来航。この不景気下での景気刺激策がなぜギャンブル?それも外資主導で?ホントに良いのでしょうか??
深~く考えさせられる一日でした。