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それ、正しい?正しくない?

人気の漫画や雑誌を無料で読めるインターネットの海賊版サイト『漫画村』が社会的な問題となっているとの報道を先日テレビニュースで観ました。

現代はネットで様々な情報が無料で入る世の中。

それはそれで便利なのですが、それ゛正しくない゛です!

 

無許可で転載された作者や出版社は出版物の販売収入で生計を立てているわけですから、対応が遅れれば売上が激減し、世界に誇れる日本のカルチャーである「漫画」が消滅しかねません。

「消費者が作り手に対して労働(汗)の対価をしっかりと支払う」ことこそが、産業や文化の維持発展につながると私たちは物事を俯瞰してとらえるべきです。

 

昔から「タダほど怖いものはない」「安物買いの銭失い」とよくいわれますが、短期的成功(と思える選択)と引き換えに私達にとって本当に大切なものが目の前から消えて無くなるケースは世の中でよくあります。

 

私の大好きなマイケル・ムーア監督の映画デビュー作『ロジャー&ミー』。

1980年代頃からグローバリズムの掛け声のもと、先進国の大企業はより安い生産能力を求めて工場を次々と海外に移転。

ムーア監督の生まれ故郷の町ミシガン州フリントは元々は巨大企業ゼネラル・モータース(GM)の企業城下町でしたが、突然の工場閉鎖により町の人口15万人のうち実に就業者3万人が一挙に失業し、街も人の心も急速に荒れ果てていく様を弱者の視点から真っ直ぐに追いかけていくドキュメンタリーの傑作です。

親の代からGMで働いてきた中流階級の多くは合理化の犠牲となり働く場所を奪われ、かつて貧しい時代の日本人が憧れたアメリカの中流階級は貧困層に転落、一方で一般市民の痛みを理解できないごく僅かのエリート富裕層の能天気なコメントとのコントラストが際立ちます。

GMが企業として生き残る(のちに倒産)のと引き換えに、多くの米国民が犠牲となり国内産業が空洞化していったのですから、この選択は果たして正しかったのでしょうか?

 

さらに貧富の差が拡大した現在のアメリカでは10%の富裕層が国内の富の80%弱を保有。

米国で最も裕福な3人(ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、ジェフ・ベゾス)の合計資産額が下位50%の米国人(約1億6000万人)の合計資産額を超えている等・・これ正しいですか?

アメリカ・ファースト(第一主義)を掲げ、製造業を米国に呼び戻し国内雇用創出を推し進めるトランプ大統領が、失われた中流層の期待と支持を一身に集め誕生したことは大いに頷けます。

 

日本でも多くの大企業が国内生産施設を海外移転し、多くの日本人が職を失うのと引き換えに存続。

国内産業が空洞化し失業者が増え、当然に消費が冷えるから税収減。

財源が足りないから増税、増税。

可処分所得が下がれば当然のように安い外国製品ばかりが売れる。

安さを求めてさらに企業は海外展開。

これ正しいですか?

 

昔はこんなに格差社会ではなかったし派遣労働なんてなかった。

バブルの頃は消費税なんかなくても税収はたっぷり。

私たちが短期的欲望をグッとこらえ、多少高くてもメイド・イン・ジャパンを大切にする世の中になれば、長期的には国内雇用も安定し、街の商店街も家族の幸せも守れるんじゃないか、そう考えることがあります。

日本の企業ももっと日本ファースト(第一主義)で良いのでは。

 

何が正しい?と選択に悩む今宵はマイケル・サンデル教授の『ハーバード白熱教室』か『これから正義の話をしよう』を読んでみてはいかが。(柳浦)